デング熱がブラジルで流行しているそうです。
リオのカーニバル中のリオ市内には公衆衛生の非常事態宣言が出され、来場者に虫よけスプレーを噴射するという対策を取るほどでした。
デング熱の原因となる害虫はネッタイシマカ。
一般にヤブカとも呼ばれるヤブカ属の吸血性の蚊の1種です。
この蚊が日本に入ってきたり、デング熱が日本で感染症として流行する可能性はどれくらいあるのでしょうか?
デング熱とは
デング熱は日本ではあまりなじみがありません。
蚊に刺されることで感染する、命の危険もある病気です。
デング熱はかつては赤道付近の東南アジアに多い病気でした。
しかし海外旅行の増加、地球温暖化などにより、アメリカ諸国や太平洋、中国南部などにも広まりました。
デング熱にかかるとまず急激な発熱を起こします。
さらに発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などの症状が出ます。
通常、発症後2~7日で解熱し、解熱時期に発疹が出現します。
デング熱患者の一部は、まれに重症化してデング出血熱やデングショック症候群を発症することがあり、早期に適切な治療が行われなければ死に至ることもあるほどの重大な病気です。
ネッタイシマカの日本侵入とデング熱流行の可能性
ブラジルで流行しているデング熱の主な原因はネッタイシマカです。
この蚊が日本に侵入し、デング熱が流行する可能性はどのくらいあるのでしょうか。
日本でデング熱が流行するかどうかは、いくつかの要因によって左右されます。
ネッタイシマカの日本侵入可能性
侵入経路としては次の2つが考えられます。
・航空機や船舶によるヒトや荷物への付着
・中古タイヤなどの輸入品
定着する可能性については、次の2点がポイントになります
・日本の夏はネッタイシマカの生存に適した温度・湿度
・卵の状態で越冬できる可能性
日本はネッタイシマカが定着できる環境です。しかし、現状としてこれまでに日本国内でネッタイシマカの定着は確認されていません。
ネッタイシマカは九州本土に近い天草諸島で1944年に異常発生し、1952年までに駆除されました。1970年以降は天草での採取例はなく、以後は本土での定着は確認されていません。
沖縄でも20世紀初頭に確認されたものの、いつの間にか姿を消しています。
なお、現在の日本に多いのはヒトスジシマカです。
デング熱の流行可能性
デング熱が日本で流行する可能性についても考えてみました。
まずはデング熱を媒介する蚊について。
日本に生息しているヒトスジシマカは、デング熱の原因となるデングウイルスを媒介可能です。
しかしヒトスジシマカはネッタイシマカよりも媒介効率は低いです。
デング熱の原因となるウイルスについてですが、デングウイルスは複数の種類があり、日本国内で流行したウイルスとは異なる種類も存在します。
日本に多く存在するヒトスジシマカはあまりデング熱を媒介しません。
しかし、ウイルスの変異によって、ヒトスジシマカによる媒介効率が向上する可能性もあります。
日本でも第二次世界大戦中、南方の戦地から持ち帰られたウイルスが、日本にも生息するヒトスジシマカによって媒介され、デング熱が流行し20万人が発病したことがあります。長崎市、佐世保市、広島市、神戸市、大阪市など西日本での流行でした。
しかし、過去60年以上、日本国内でのデング熱の発生は確認されていません。
ただし、外国からの帰国者のデング熱感染例はあります。
2014年にはデング熱の国内感染例が1例確認されました。海外から帰国した患者からの輸入感染症の例は毎年100例前後、報告されています。
デング熱流行に影響を与えるその他の要因
そのほかに日本でデング熱が流行する要因として、次の2つが考えられます。
・地球温暖化
・国際的な人の移動
まず地球温暖化について。
気温上昇により、ネッタイシマカの生息域の拡大が考えられます。
生息域が広がると、日本国内でのネッタイシマカが定着するリスクが増加します。
国際的な人の移動も見逃せない要因です。
飛行機などで全世界を行き来できる現代では、感染者の移動によってウイルスも各地に広がります。
世界的な感染者数の増加と流行地域の拡大により、日本へのデングウイルス侵入のリスクが増加します。
デング熱防止の現状と対策
厚生労働省は、ネッタイシマカやデングウイルスの海外からの侵入・定着防止、デング熱の国内発生時の早期発見・早期対応に努めています。
具体的には、
・空港検疫での水際対策強化による輸入症対策強化
・蚊の生息場所の調査・対策、殺虫剤散布による媒介蚊対策
・国民への情報提供を行う予防啓発活動
などです。
最悪の場合は死に至ることもあるデング熱が日本国内で流行しないよう、厚生労働省はしっかりと対策を講じています。
結論ー過度な心配は不要ー
ネッタイシマカの日本侵入とデング熱流行の可能性はゼロではありません。
しかし、現状では日本国内でのデング熱発生は稀です。
ネッタイシマカの少ない日本では適切な対策を講じることでリスクを抑えられるので、過度な心配は不要です。
デング熱の発生地域へ渡航する場合は、蚊に刺されないように注意してください。
特に熱帯など蚊の多い地域に行く際は、長袖・長ズボンの着用や、虫除けスプレーなどを使うと良いでしょう。
蚊をよけるためには「蚊帳」という選択肢も
デング熱が日本で流行する可能性は低いものの、それでもやはり蚊は敵。
虫よけスプレーや殺虫剤、蚊取り線香など蚊の対策はいろいろあります。
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